2008

08.24

お仕置き・60

第一部・琴音・1(夫)を先に読む
第二部・琴音・8(義母)を先に読む
第三部・琴音・17(義父)を先に読む
第四部・琴音・21(お披露目)を先に読む

★琴音・27★ 

 心を閉じて。何も感じないように。何も考えないように、ただ、痛みだけを追えるように。自分に、言い聞かせ、息を吸い込み、震える身体を台の上に乗せる。
 眼を開けると、目の前に並ぶ見知った顔。顔。顔。ギラギラと欲望に血走らせた眼、好奇にキラキラと光る視線、憐れむように痛ましげに向けられる表情。そのどれもが、琴音の胸を容赦なく貫く。

 なぜ、こんなめに?なぜ、私は、逆らわないで耐えているの?

 衆目の中に身体を晒し、愛する夫の手で打ちすえられ泣き叫ぶ様を披露する事の意味がみつからない。痛みと恥辱が、彼女をいっそう混乱させ、何を頼りに耐えればいいのか・・・琴音は、すっかり見失ってしまっていた。


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 智也の手が着物の裾に掛かり、冷たい綸子の布が肌の上をするすると滑っていく。火照って赤くなった尻が夫の前に現れる。見ているのは夫だけだ。だから、大丈夫。だから、耐えられる。

 なにが、大丈夫だったんだろう?何を耐えればいいんだろう?

 熱く、気のせいか、自分でも一回り膨れ上がったと思われる肌に、冷たいパドルの表面が押しあてられる。ぴたぴたと予告するかのように。前を向いているのに、視線を動かした訳でもないのに、真後ろにいる、夫が自分の尻にパドルを押しあててる様が視界の端に見えたような気がした。
 ゆっくりと振りかぶり、振り下ろす様が。そのパドルの動きが。肌に近づいてくるその軌跡が・・・・。


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 バッチィイイイイイィン!!

 痛みが、炸裂した瞬間に、琴音はいつものようにひゅうっと、息を吸い込んだ。身体が前のめりになり、ギュッと瞑った瞼の裏に、赤い火花が飛ぶ。吸い込むために開けた口から吐きだされる息とともに、悲鳴が、零れおちて行く。止めようがなく、抑えようもない。
 痛みが、身体全体に拡がって行く間、琴音は手をついた台の縁を握りしめる事しか出来なかった。
「ひとおおっつ」
 数える智也の声だけが、今の琴音にとってただ一つの拠りどころだった。

 ぶれる視界に、自分を見つめている人たちの歓喜を隠しきれない表情が飛ぶように流れるのが映った。どれほどの言い訳をしようとも、愛や、しきたりの言葉で覆い隠そうとしても、見世物になっている事実は、消しようがない。欲望を隠そうともしない男たちが、そして憐れむように眉を顰める女たちが、わき上がるサディズムの感情に酔いしれ始めているのが、琴音の、剥きだしになった感覚に喰い込むように感じられる。


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 バッシィイイィイイイィン!!

 速く、ときにはじらすように遅く。琴音が、その痛みを充分に味わえるように。また、体勢を立て直す余裕を与えず、思いっきり泣けるように。智也の打擲は、琴音の抵抗を削ぎ落とすように、容赦なく続いた。
 琴音の見開かれた瞳から、大粒の涙が溢れ、零れ落ちる。痛みは一打毎に強く、熱く燃え上がるように感じられるのに、恥辱に満ちた世界は段々と琴音の周りから遠ざかって行くようだった。
 何もかもが混沌と混じり合い、それでいてクリアに手で掴みとれるような気がしてくる。一打毎に、高ぶっていく、皆の高揚していく残酷さ。その前に差し出されている若妻の痛みに泣き悶えるその姿を、一滴残らずしゃぶりつくそうとする人々の欲望が。


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 ああああああぁぁぁ!!!

 涙にすっかり濡れて、苦痛に歪み赤くなった打ち振る顔も、段々とはだけてくる胸元も、台の縁を握りしめる白くなった指も。勝手に跳ねる脚も。捻じれる身体も。

 楽しんでいる。
 私の苦痛を、苦難を、恥辱を、避けられない定めを・・・。
 彼らは楽しんでいるのだ。夫も、そして義父も義母も・・・。

 琴音の心は、ばらばらになり、痛みの中で、揉みくちゃになった。守っていた自尊心を繋いでいた鎖の輪が、一つ一つ緩み始めていた。

「にゅじゅうううううごっ!」
 最後の声を聞いた時、琴音の足はもう彼女の身体を支えてはくれなかった。彼女はずるずると、台の端から滑り落ちた。



続く・・・

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    2008

08.06

セピア色の記憶



記憶はいつも曖昧なのに
ドキドキした事だけは覚えてる

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痛みはすぐに忘れるのに
欲しい気持ちだけは残ってる

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泣きながら暴れて
謝って 許しを請うて
早くおしまいにして
おしまいにして
終わりにして

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お仕置きなんて大嫌い
痛いのなんて大嫌い
脱ぐのなんて大嫌い

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・・・って、思ってるはずなのに

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怖くて、逃げだしたいはずなのに・・・

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待ってる時間がたまらない

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そんな私を しかって ください
すごく悪い子にしてるから 


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    2008

07.09

かわいいあなたへ



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泣いてる あなたが好きよ
その悲しそうな顔が

私のものだと思わせてくれる・・・

腕の中に絡めとって
抱きしめたい

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そそけ立つ頬を撫であげて
慄く唇をこじ開けて
しゃくりあげるうめきを
吸い取りたい

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私の所へ 歩いてくる
その一歩一歩を数えているの
戸惑い、おびえ、ためらいながら
伸ばすその手をつかみたくて

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それは、恋のように
はばたく小鳥のように
もろく壊れやすい
それでいて いつまでもつづく打ち寄せる波
欲しいと思う欲望
決して失わず
決して色褪せない

あなたの中の痛みは



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    2008

04.08

お仕置き・59

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第二部・琴音・8(義母)を先に読む
第三部・琴音・17(義父)を先に読む
第四部・琴音・21(お披露目)を先に読む

★琴音・26★ 

 次に琴音に着せられたのは鴇色の綸子の着物だった。着物を纏う時、琴音は胸を覆うのを諦めるしかなかった。一瞬、一瞬の間だけ我慢すればいいのだと、自分に言い聞かせて、考える事をやめて袖を通す事に専心した。
 義母の慣れた手によって対丈着物は襟を合わせられ、赤い伊達締めで腰を巻き締められていった。身体が覆われた安堵と共に、次のお仕置きが始まるのだと思うと、緊張に立ち竦む琴音だった。
 次はパドルと聞かせられていた。琴音が着替えている間に、いつの間にか正面には、文机のような台が持ち出され、その上には皮砥を短くしたような、よくしなう黒い革のパドルが乗せられていた。


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 いかにも凶暴な、その分厚い姿が、どれほどの痛みを自分の身にあたようとしているのか想像すると、恐ろしくてならない。25打と言えば、さほどの数ではないような気がしても、すでに、いつになく厳しく強く打たれて腫れあがった彼女の身体が、どれだけ耐えられるのかと思うと、おぼつかない心持ちもするのだった。
 だんだんに、慣れて、だんだんに、耐えられるようになっていた琴音だったが、今日の展開はあまりにも考えていたのと違い、次にはいったい何が起こるのか、分からないだけに、琴音は恐ろしくてならなかった。


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 後ろに下がっていた智也がおもむろに進み出ると、じっと琴音をみつめた後、パドルを取り上げた。
 琴音は急に周囲がすべて遠ざかって行くのを感じた。座に居並ぶ人たちも。天井も。壁も。床も。どんどんと遠ざかり、その存在を感じ取れなくなって行く。ぽっかりと開いた空間にあるのは四角く黒く磨き抜かれた台とその前にいる智也と自分だけ。
 そしてその智也が手に持っている革の道具だけ。黒く。つやつやと光る、四角くきっちりととがった角が、禍々しい道具。
 皮が掌の上に打ちつけられる。その音が琴音の何も無い世界に響く。
 その音だけが。ぴたぴたと、肉を打つ、その響きだけが。


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「琴音。台に、肘をついて、足を伸ばしたまま。」
 琴音は智也から、その黒い文机のような台の表面へ視線を移そうとした。これから、自分が屈み込む場所を。だが、琴音は視線を、革のパドルから外す事が出来ず、ただ息を吸い込み吐き出すことしかできなかった。
「こちら側にする?それとも向こう側?」
 頭の中を質問がぐるぐると廻る。こちら側?向こう側?肘をつく場所を言ってるの?ようやく、琴音の視線がぎこちなく机の方へ移る。だが、顔はまだパドルを見つめた位置から動かせなかった。
 こちら側に肘をつけば、座に向けるのは泣き顔だった。向こう側に肘をつけば、客に晒すのはつきだされた尻だ。


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 どんなに意識してぴったりと足を閉じても、お尻を突き出せばすべてが丸見えになってしまう。だったら、恥ずかしくても、辛くても、顔を見られる方がまし・・・。もう、さっき、顔は一度観られてしまったのだもの。
 痛みに移りゆき、歪む顔を見られるとしても。涙に濡れる叫ぶ顔を見られるとしても。恥ずかしいあそこを見られるよりはずっとまし・・・。
 そう、決心しても、琴音の乾いた舌はぴったりと上顎に貼り付いて、言葉を押し出す事が出来ない。何度も唾を飲み込み。何度もためらって、琴音は震える腕を上げて、黒い台のこちら側を指差した。
「こっち側で・・・。」
 智也は、うなずいて、身体を開き、琴音を移動させるべく誘った。

つづく


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    2008

04.07

お仕置き・58

第一部・琴音・1(夫)を先に読む
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第三部・琴音・17(義父)を先に読む
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★琴音・25★ 

 てきぱきと、素早く前に廻った義母が、琴音の着物の襟に手を掛けて、さっと前合わせを開いた。何が起こっているのか分からなかった琴音も、着物が肩口から引き降ろされると、顔色を変えて脱ぐまいとして抗った。肩をすぼめ、引きはだけられようとする着物を押さえる。
「いやあ!お義母さま、何をなさるんです!?」
「着替えるんですよ。琴音さん。すっかり濡れてしまってるでしょう?」
「そんな、嫌、嫌です。ここでは、いやあ。」
 何も分からず逆らおうとする琴音と、何もかも分かっていて、脱がせようとする明子では全く勝負にならなかった。押さえようとする手を払いのけられ、上半身を引き降ろされてしまうと琴音は身体を隠そうとする事に夢中になってしまい。いつのまにか羽二重の一重は彼女の身体から剥ぎ取られていた。


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 白くぬめぬめと光る背中を丸め、小さく、出来るだけ小さく、丸くうずくまった琴音は、恥ずかしさの余り顔を上げられなかった。手を緩めれば、彼女の丸い乳房はぽろんと零れ落ち、衆目の元に晒しあげられてしまう。
 このまま地面が二つに裂けて、自分を呑み込んで行ってくれないか。目をつぶり、ますます身体を縮こめる琴音だったが、願いは叶えらずはずも無かった。
 助けて、助けて、助けて・・・。嫌、嫌、嫌・・・。
 何も考えられない。動く事も出来ない。どうしたらいいの。どうしたら・・・。
 その琴音の裾よけの紐に義母の手がかかったのに気がつくと、琴音は、身体を隠す事を忘れ、びくんっととび上がった。あっという間に紐が引かれ、布は身体の周りから引き抜かれる。一瞬青ざめた琴音は、自分が全裸で皆の前にいるのだという事実に、あっけにとられて、呆然としてしまった。


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「きゃああああああ!!!」
 甲高い悲鳴と、驚きと、羞恥が、琴音を打ちのめした。座席に連なっていた男たちが膝を乗り出すように動き、反対に、女性たちがさりげなく顔を背ける。
 全身を赤く染めた琴音は、驚いて起こした身体をまた縮こめた。一瞬だが、ゆるめた腕からまろび出た彼女のふっくらした乳房はまた見えなくなってしまった。
 明子が、新しい赤い腰巻を持って、彼女の前ににじり寄る。
「琴音さん、立って、そのままでは続けられませんよ。」
 いやいやいや、琴音は首を振り続けた。だが、どうしたって、このまま裸でいるうずくまり続ける事等、出来はしない。

 諦念がひたひたと琴音の胸の内によせてくる。途中でやめるなんて、もっての他・・・。そう思い当たると、琴音に残されたのは立ち上がる事だけだった。






 泣き顔を上げると、明子が出来るだけ彼女の身体を隠すように、座の視線を遮る位置に座ってくれているのが分かった。震えながら、力が入らず頼りない身体を起こして、膝をつく、手は胸を覆ったままだ。膝を揃えたまま、立てた爪先に力を入れて、膝を床から浮かせた。足裏を床につけよろめきながら立ち上がる。
 片手で胸を、片手で足の付け根を、恥ずかしさから出来るだけ身を覆うとする若妻の姿は、身体を見せる事を何とも思わない昨今の女性の裸しか見た事が無い男たちにとって、垂涎の見世物だっただろう。
 そうして、慎ましく、隠そうとすればするほど男たちが喜ぶなどと、気が付きもしない琴音だった。はらりと広げられた、さっきまでとは違う赤い腰巻が、彼女の腰に廻された。
 手をどかさないと、着付ける事は出来ない。琴音は赤い顔をそむけ、外した手を、一瞬宙に泳がせた。どうすればいいのか分からない混乱とパニックに襲われて、琴音はその場に墜落して行きそうな気持ちだった。

 一瞬だったが、琴音のなにも追わない柔らかな繊毛が覗いた。明子の身体にほとんど隠されていたけれど、見えたような気がしてよく見えなかった事が一層男たちを興奮させてしまう結果は、多分、最初から計算されたものであったのだろう。






 両手で、胸元を覆い、顔を隠すようにうつむいて、赤い腰巻一枚で頼りなく身体を捻じらせている琴音は、美しかった。
 これから彼女の上に重ねられる仕打ちを思うと、尚更に、けなげに耐えようと震えている琴音は美しかった。

つづく
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    2008

04.02

お仕置き・57

第一部・琴音・1(夫)を先に読む
第二部・琴音・8(義母)を先に読む
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★琴音・24★ 


 自分の足もとにくたくたとくず折れて、ぼんやりと視線をさまよわせている妻をみつめながら、智也は、この「しきたり」とやらは、いったいどこから来たのだろうと考えていた。
 おそらく、最初のはじまりは、単純に酒席の酒肴のようなものだったのではないだろうか。どのような美辞麗句で、飾りたててみても、この行為が男の嗜虐への欲求から産まれたものではないと言えないだろう。
 もっと昔には、確かに、刑罰としての行為だったのかもしれないが、今現在の曖昧な「お仕置き」の在り方から察するに、どこかで、形骸化してしまったに違いない。
 男たちの欲求から産まれたこの行為が、明確に今のように「しきたり」としての体裁を整えたのは、まだ、そんなに昔の事ではなかった。智也の祖父母の時代だったからである。


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 琴音に告げていない事がひとつあった。今日の日に招かれている親族以外の男たち。その男たちの先の枝葉の先にも、河野の家にあるような隠されたいろいろな習慣がいくつも網の目のように広がり、それは、他の地方の旧家とも重なり、日本全国に妖しく潜み続けている事である。
 智也も、それらの宴席に侍る機会を何度か得ていた。中には、河野家のように、形ばかりの「性の儀式」とは、無縁の様相を示している家ばかりではなかった。いや、むしろ、あざといまでに無残な加虐の行為が連なった模様を成す織物だったと言えよう。
 だが、絶対に表に見せてはならない秘密を共有しているという事が、それらの家の結びつきをより強固なものにしていた。そして、そのつながりが多くの家の経済的な結びつきを側面から援護していたのである。


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 河野の家をその模様へ組み込んだのは、智也の祖父だった。その必要があり、家のために自分の妻を、娘を、差し出したのだ。だが、それだけでは済まなかった。家族を犠牲にしたと言えば、むごいありようだったかもしれないが、連なりに入りこむ事は、加虐の連鎖に自らが繋がれる事でもあったのだ。
 一度味わった、背徳の美酒が、男たちを引きつけがんじがらめ取り込み、女たちを蕩けさせていった。その事について、父や母がどう考えているのかは、分からないけれど。自分がそうである事は、智也自身にはよく分かっていた。分かっていて愛する者を引きこんだ。


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 まだ、もっともっと若く、何も知らなかった頃に、他の家の宴席に招かれて行った日。河野の家になかった、性としての儀式を目の当たりにした時、自分がそれを嗜好する人間なのだと思い知らされたあの日。
 もしかしたら、家を捨て、名を捨てて、違う人生を歩めるのではと、模索した日々。忌わしく振り棄てようとしながらも、結局は、忘れられず、繰り返さずにはいられなかった加虐の行い。
 後悔しても、もう遅い。琴音に、違う道を行けと言う事が出来なかった。遠ざかり、幸せになれと言えなかった。琴音を自分の腕の中に抱き締めたかった。痛めつけると分かっていて、まやかしの誘いを仕掛けずにはいられなかった。
琴音を愛していた。


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 すっかり汗に濡れ、ぴったりと張り付いた絹の着物の裾を乱れさせたまま、呆けたように、智也の方へ視線をめぐらしていた琴音が悲鳴をあげた。後ろから近づいてきた智也の母が、呵責せずに、彼女の、身体を覆っていた着物をしっかりと結んでいた伊達巻きの結び目を素早く解きほどいたのだ。
 しゅるしゅるしゅるっと絹が鳴る音が響き、帯は素早く抜き取られて行った。はらりと、着物の合わせ目が緩み、琴音は生き返ったように、とび上がってぞの前合わせを抑えた。

つづく
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    2008

04.01

お仕置き・56

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★琴音・23★ 


 晒された素肌に夫の掌が直に触れてきた。その様を見られているという事実に、琴音は身もだえした。恥ずかしい。恥ずかしい。いやいやいや・・・。智也の手が伸ばされて、必死にすくめている琴音の顎を持ち上げた。汗ばみ、遅れ毛を貼りつかせて、眉を寄せ、歯を喰いしばって真っ赤になっている琴音の顔が、皆の前に晒しあげられる。智也は身体を半身に、彼女の顔がより、皆に見えるような位置へ動いた。
「さあ、泣き顔を見せてあげないと、みなさんは、それを見に来ているんだよ。」
 低く、ほとんど息だけの夫のささやき声に、一層恥ずかしさが込み上げてきて、琴音はいやいや・・・と、頑是なく首を振った。部屋にため息が満ち、夫の言う事が本当だと身にしみて分かる。
 だめ、だめ、だめ、だめ、見ないで。いやいや、見ないで。琴音は、ただただ、首を振り続けていた。智也は彼女の顎を掬いあげた掌をそのままに、反対の手を振り上げた。
 そして、むき出しの彼女の尻に、51打目の打擲が振り下ろされた。
 
 ばっしいいいいいいいぃいいいいいぃん!!!!


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「きゃああああああああああああああ!」
 たった一枚、肌を覆っていたのはその一枚だけだったのに。それを取り除かれた事が、琴音の心に動揺を呼んでいた。自分の受けている行為を支えていた言い訳があっという間に崩れ去り、作り上げていた集中が途切れてしまった。
 その事が、一枚の布と言うだけには留まらない強い痛みとなって、彼女に襲いかかってくる。叫んでしまった事が、それに輪をかけて、意地も張りもあっという間にガラガラと崩れて行った。

ぱああああああああああああああんん!!
「ひいいいいいいいいいいいっっつう!」


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 もちろん、最初の50打を琴音が耐えきったのは、布一枚に守られていて痛みが無かったせいではない。だから、すでに彼女のお尻は充分に痛めつけられていた。手慣れた智也の打擲は、回を数える毎に、膨れ上がり腫れあがった彼女の身体に響く。
 こらえようとしても、身体は跳ねあがり捻じれ、逃れようと勝手に動く。やめて、もう、許して。我慢できない。耐えられない。琴音の頭の中は、悲鳴と哀願でいっぱいだった。
 智也は顎を持ち上げていた手を彼女の背中に廻して抑えつけなければいけなかった。ついには、右足を彼女の足に絡めて、身動きが取れないようにする。


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 半身になっていた身体の方向を変えて、今度はわずかながら正面にお尻がよく見えるような姿勢になった。一打毎にたわみ、波打つ打撃に晒されている彼女の真っ赤なお尻。
 一心に打つことに専念していた智也だったが、彼女の悲鳴が泣き声になり、掠れて来ると、さすがに、居並ぶ客の方を伺わずにはいられなかった。そこには彼女の母親も来ているのだ。智也のはばかるような視線を受け止めた琴音の母は、そっと顔をそむけると、ついっと立ちあがって夫とともに部屋を出て行った。
 花嫁の両親は、最後まで見届けない事も、すべて最初からの取り決めであった。あらかじめそう決まっていたとはいえ、智也はほっとした。
「ありがとうございます。」そして、心の中で義母に詫びた。この先の場面は、さすがに彼女の両親には見せたくないのが智也の本心だった。


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「あああああぁぁぁぁあぁん・・・。」
 琴音の悲鳴が舌足らずの子供のように、甘いものに変わっていく、あきらかに身体の反応が、変化し始めている。痛みは飽和状態になり、麻痺し始めているに違いなかった。彼女の身体も心も違うものに支配され始めていた。
 恥ずかしさや、苦痛以外の物が、彼女の中から溢れだしてくる。だが、それもあとわずかの事。掌で打つのとケインを使うのでは全く違う。突っ張る彼女が、夢を見ていられるのもあとわずかの事。
 座を覆っている、かたずをのんでいる男たち女たちも、いまや酩酊しているかのように、琴音の反応を見守っていた。

「100打、相務めましてございます。」

 智也の宣言と共に、力を失った琴音の身体はずるずると膝の上を滑り落ち、ペタンと床に座り込んでいた。


つづく
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    2008

03.28

お仕置き・55

第一部・琴音・1(夫)を先に読む
第二部・琴音・8(義母)を先に読む
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★琴音・22★ 

 「いつまでも、やってこないで欲しい。」
 琴音の願いをよそに、あっという間に当日になってしまった。
 義母に初めてお仕置きをされた日に訪ねてきた、崎山も、客の一人だった。別れ際に「別な機会にお目にかかるのを楽しみにしていますからね。」 と、言われたのは、あの日、既に崎山は、年に二度の会合で次回は何が行われるのかを知っていたのだ。今になって、改めて気がつく、琴音だった。
 あの日は、フレアスカートを穿いて、澄まし顔をしていた琴音だったが、今日は、白い絹の裾よけの上に、同じく白い羽二重の一重の着物を一枚まとっただけの姿だった。腰を締め上げている伊達締めも、白い綸子の生地で作られている。他には何も着ていないのだから、洋装に慣れた琴音は頼りなさに一層落ち着かない気持だった。
 彼女のこわばった頬は、緊張にそそけだっている。


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 八畳の和室が三つ連なる南側の部屋の仕切りの襖は取り払われて一続きの広間になっている。そこに、会席膳を左右に20席並べた席が設けられていた。すでに、一通り酒が廻り、酒席は期待と興奮を微妙に覗かせながらも、和やかな雰囲気になっていた。
 その席へ、智也に伴われて、琴音は部屋の下座から滑り入った。居住まいを直して、両手を付いて、頭を下げたものの、もう、顔を上げる事が出来ず、肩で息をするばかりだった。
 かっと、身体が熱くなる。頬に血が昇り、恥ずかしさにそのまま消え入りたい想いであった。智也の手が背に掛かり、顔を上げて立ち上がる事を促していた。
 必死の思いで起き上がると、男たちの顔、顔、顔・・・。そして、突き刺さってくるような女たちの視線に、琴音は、涙が盛り上がってくるのを意識した。

 その瞬間、母親の姿が目に飛び込んでくる。大事に育ててくれた、その母に恥をかかせてはならない。おそらくは、娘が打ちたたかれるのを見るのは、母にとってもきっと辛い事なのだから。
 身体を見られる事を恥ずかしく思う事は、この儀式を、性の儀式に貶める事。母に見せられないもののように、けがらわしく思う事。そんな考えでは、とても、母の前に進み出ることなどできはしない。これは、しきたり。河野家の大事なお披露目のしきたりなのだ。


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 力の入らない脚を叱咤しながら、智也に手を取られて、席の中央を抜けて正面まで行った。一番の上座に和風にしつらえた金襴でくるまれた低い椅子が置かれている。背もたれも肘掛もない座面だけが広くしつらえられた椅子。
 その横へ智也は、一旦、膝をついて座った。琴音もその横に慎ましく、控える。
「皆様、本日は、お忙しい中、私の妻となりました琴音の披露目の席にお集りいただきましてありがとうございます。河野家のしきたりに添いまして、妻の「仕置き」を皆様に、ご披露したく存じます。まだまだ、不慣れでございますが、夫として宰領訳を精一杯務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。」
 智也の言葉の間、とにかくこの間だけはと、必死に顔を上げていた琴音は、夫の言葉が途切れると、急いで頭を畳に付いた両手の上に深く伏せた。智也が立ち上がり、椅子に座る。琴音は手をついたままにじりより、夫の膝の上に身体を乗せかけた。


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 もう、だめだ。琴音はギュッと目を瞑った。ああ、もうだめ。どうしたってだめ。みんなに見られてしまう。お尻を叩かれる所を見られてしまう。
 智也の手が裾に掛かり、布がめくり上げられる。着物をたくしあげられた後は、薄い絹の布がぺらりと一枚身体を覆っているだけだった。身体の線はすでに露わで、素足の足が畳の上を滑る。
 いやいや、助けて。見ないで。誰も、見ないで。ああああああ・・・いやあああああ。琴音の気持ちを余所に、そろりと尻を撫で上げた智也の掌が琴音の身体に振り下ろされた。
 ばしいいいいいいいいいいいいんん!
 まるで、心を澄ませて柏手を打った時のように、部屋の中に音が響き渡り。琴音はびくんっと身体を逸らせた。


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 ばしいいいん!ばしいいいん!ばしいいいん!
 規則正しく、位置を少しずつずらしながら、智也の手は振り下ろされていく。一打。また、一打と。不思議と琴音は痛みを感じなかった。緊張の余りなのか、アドレナリンが身体中を駆け巡っているせいなのか。一打毎に、頭が澄み渡り、空っぽになって行く。
 打たれている場所に、世界が収束されていくかのように、拡散していた意識が一点に集中してくるのが分かった。
 熱い。打たれた場所が・・・。そして、身体中が。熱い・・・。琴音は身体が汗で濡れて来るのを感じながら、智也の膝にしがみついたいた。最初の50打がそうして、琴音の身体の上に打ち下ろされた。


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 頃はよし、と、みたのか。おもむろに智也が裾よけをそろそろとめくり上げ始めた。熱のこもっていた足元に、冷たい空気が流れ込み、琴音ははっと息を呑んだ。覆われていた、身体が、今、晒されようとしている。
 これは、儀式。お披露目の儀式。しきたりの儀式。琴音は何度も自分に言い聞かせ続けていた言葉を胸の内で繰り返した。だが、そろそろと這い上がってくる布の感触が、自分の置かれている位置と、姿を思い知らせて来る。
 収束しガラスが丸くなるように作り上げられていた琴音の世界が崩壊した。一気に羞恥が襲いかかってくる。あ、あ、あ、見られちゃう。お尻を見られちゃう。赤くなったお尻。掌の痕を浮かび上がらせて腫れあがったお尻を。

 いやああああああああああ・・・・。

つづき

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    2008

03.27

お仕置き・54

第一部・琴音・1(夫)を先に読む
第二部・琴音・8(義母)を先に読む
第三部・琴音・17(義父)を先に読む

★琴音・21★ 

 義母がこのしきたりの洗礼を受けた時は、今よりもずっと昔だった。おそらくは、短いスカートを着て人の前に足を見せるのすらはしたないとされてきた時代。それでも、義母も、その洗礼に耐え抜き、今、立派な河野の嫁として、しっかりと家に根付いているのだ。
 自分もやがて、息子を産み育てて、後の世代に、この「しきたり」を伝えていく日が来るのだろうか。気の遠くなるような先がまだある事に、琴音は押しつぶされそうだった。ただただ、智也の傍にいたいという娘らしい憧れと恋に彩られた結婚が、これほどの顎と開けて自分を待ち構えていたとは、考えてもいなかった。 


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 だが、琴音が恐れていたのは人前で肌を晒すことだけではなかった。この半年、夫との間に重ねてきた愛撫と性交の合間のスパンキングが、自分の身体を興奮させるようになってきている事に、琴音は薄々気が付いていた。
 痛みは、嫌で、耐えがたいものであるのに、自分から求めた事など一度もないのに、打たれれば打たれるほど、その後の交わりは熱く愛情に満ちたものになる。
 義母や義父に打たれる時には、欠片ほども欲情など思い浮かばないのだが、夫に打たれると思うだけで、じんわりと、身体が期待に震えるのが分かるのだった。そんな自分を他人の前に晒すという事は、云わば、夫とのセックスを他人に見せるような、そんな恥ずかしさも覚えてしまうのだ。


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 くしゃくしゃと顔をゆがめ、震える手を握りしめても、何の役にも立たない。その日はもう、すぐ目の前で、琴音は逃げ出すわけにもいかず、とにかく、みっともない真似を皆の前に晒す事のないように、ひたすら耐えるしかないのだ。

「ただ、回数がとても多いのよ。掌で100回。それから、パドルで50回。そして、最後はケインで25回。でも、心配しなくてもいいわ。すごく痛いけれど、かえって、最後の方は麻痺してしまって案外耐えられるものなのよ。それに、その回数になれば、もう、見栄や外聞なんてどうでもよくなりますからね。かえって思いっきり泣いて叫べばすっきりしますよ。みなさん、花嫁の泣き顔を見るために来てるから、琴音さんが泣き叫んでも、平気ですよ。」
 ほほほ・・・と、明るく笑う義母に、何とも返事のしようもなく、震え続ける琴音の身体を、智也はぎゅっと抱き寄せた。


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 夫に支えられて、何とか自室に戻った琴音はベッドの上にくたくたとくずおれた。足に力が入らず、立っている事が出来なかった。
「怖がらないで、琴音。大丈夫だよ。たった一日だ。その日はすぐ過ぎるから。」
 そんな事。そんな事、まるで、他人事のように!智也さんは、自分が、叩かれる訳じゃないから、そんな事が平気で言えるのよ。裸にされるのは私。痛い目にあうのも、私なのよ!琴音は、あふれてくる思いを智也にぶつけるように、相手の腕をこぶしで打った。だが、その言葉は口から出す事は出来ない。ぎゅっと、歯を喰いしばり、涙をこらえて、押し殺そうとする。
 その時、琴音は、初めて智也の瞳と、向き合った。
 大事な妻を他人に、見せなければならない妬心と溢れる愛情、どこか冷静な河野家の当主としての顔、そして、それらと同居している琴音を怯えさせる加虐の喜びの暗い光。琴音が嫌がれば嫌がるほど、明確に姿を現す雄の嗜虐の欲望が、夫の中にある。


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 ああ、私・・・。
 捕らえられてしまっている。この男のむごい愛情に。私を痛めつけるその手に。その想いに。その欲望に。嫁いで来る時には分からなかった。痛みの意味。分け合うこの恥ずかしくも恐ろしい運命の嗜好を。

 もう・・・逃げられないのだ。

つづく
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    2008

03.26

お仕置き・53

第一部・琴音・1(夫)を先に読む
第二部・琴音・8(義母)を先に読む
第三部・琴音・17(義父)を先に読む

★琴音・20★ 
 
 河野には、親族の当主達が全員、酒席に集う機会が、年に二度あった。6人ほどの血筋の者と非常に昔から付き合いのある親しい相手が3人ほど。その席には琴音の父も呼ばれてくる。その日に、新しい河野の家の嫁となる琴音を紹介するために、今回は、その男たちの妻も同席すると教えられたのは、もう、その日が目の前に迫って来てからの事だった。
 当然、琴音の母親もやってくる事になる。
 そして、その席で「お披露目」と称して、皆の前で智也が琴音のお尻を打つことになっているのだと説明されて、琴音は驚きのあまり、凍りついてしまった。


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 琴音の両親と智也の両親が四人ともそろう上に、結婚式でしか会ったことのない遠い親戚の男たちに、名前を聞かされたばかりの年配の男達。そして、その妻達の居並ぶ中で、お仕置きを受けないといけないなんて、考えただけで恥ずかしさの余り、その場で舌を噛んで死んでしまいような気持ちになる。

「いやいや、そんなの絶対にいや!」
 琴音は、その事を訴えようとぱくぱくと口を開けたが、言葉は恐ろしさと恥ずかしさの余り、音にならず、喉の所が締め付けらるように苦しい。何か纏い付いている者を払いのけるように右手で喉元をまさぐり、息を整えようと必死になるが、くらくらとめまいがするばかりだった。


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 智也の腕が、ソファに沈んで行く琴音の身体を支えるように、回される。琴音が何を考え、どう思っているのか等、もちろん、智也に分からない訳はないのだった。小さい頃から慣れ親しみ、愛情を分かち合って来て、これからの人生を共に、と結婚した二人なのだから。
 だが、それでも、智也は、琴音とは違う価値観を持っている。それは「お仕置き」が、河野の家にとって、何よりも大事な「しきたり」だと教えられて育ち、それを守って行く責任のある、次代の当主として当然の覚悟だった。
 「しきたり」を、受け入れられないのなら、ともに生きる事は出来ない。智也にそう伝えられ、覚悟をして嫁いできた。そして、この半年、必死に打擲を受け入れ、その価値観に同化しようと努力してきた琴音だった。


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 だが、それにしても、あんまりな事態ではないか。大事にしまいこんできた肌を晒し、痛みに耐える泣き顔を、親族ばかりか、赤の他人の男や女にまで晒さなければならないなんて。
 お仕置きのために下着を脱げば、当然一番隠しておきたい場所も、どうしたって見られてしまう。義理の父ただひとりににすべてを見られた時でさえ、あれほどつらく恥ずかしかったのだ。その席に、他の人間が同席する等考えるだけで、どうにかなってしまいそうだった。
 しかも、これから、ずっと親戚付き合いを重ねていく相手なのだ。記憶はどこまでも、琴音に纏わりつき苦しめるだろう。耐えられない。絶対に。琴音は、必死で智也の腕にしがみついた。


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 「琴音さん、恥ずかしがることなんて無いのよ。みなさん、このしきたりの事はよく御存じなのですからね。子供の頃におしめを換えてもらうようなものですよ。」
 ほほ・・・と、上品に笑う義母の微笑みを見ると、琴音はくたくたとその場に倒れてしまうような心持がした。なにを、どう訴えても、決して、決して逃げる事は出来ない。もう、それは、決まった事。動かせない事。ずっとずっと昔から変わらず、連綿と続いてきた「しきたり」で、義母もまた、それを乗り越えて今そこにいるのだという事が、じわじわと琴音を追い詰めていた。

つづく

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    2008

03.19

すけべなおじさん・3



ほんとの事を言わないとお仕置きだよ
って、おじさんは笑った
私の頬に触った
おじさんが何を考えてるか分かった
私の身体は思わず後ろに下がった

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押さえつけられ、引き据えられて
乱暴に、無理やり、自由を奪われて
叫んでも、泣いても許してもらえなくって




ほんとの事ってなんだろう
無理やりスカートをまくられて
素肌に触れて来る手のひらから逃れようと
必死に腰をくねらせる




いや いや どうして服を脱がせるの?
いや いや どうして裸にするの?




あっちこっち触られながら
あれこれと叱られながら
素肌に刻印を押されて行く




淫らな娘 淫らな心 抵抗せず受け入れる
心弱い娘・・・
脱がされても、打たれても、辱められても・・・




仮面は大人の重要アイテム
嘘は大人の常識の言葉
痛みの中で泣きながら覚えさせられた

あしたは、新しい「ほんとの事」を考えてこよう


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    2008

02.18

Cutiespankee

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以前、ご紹介した時に「もっと見たーい!」と、リクエストがあった「Cutiespankee」さんのサンプルを発見♪さやかのお気に入りの「鏡子」ちゃんも、最近、川上ゆうさんの名前で出演してるんだよー。知ってたぁ?(〃∇〃) てれっ☆バレンタインデーにはチョコレート作ってるシーンがあるよー♪もう、かわゆくってよだれもんです!ヾ(@⌒¬⌒@)ノ じゅるじゅる・・・

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    2008

01.31

お仕置き・52

第一部・琴音・1を先に読む
第二部・琴音・8を先に読む
第三部・琴音・17を先に読む

★琴音・19★ 

 痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い・・・
 琴音の頭はその言葉で埋め尽くされている。ケインはまるで焼き鏝をあてたかのように、彼女のお尻の上で弾けた。ひいいいいい・・・と、呼吸音を伴った悲鳴が続き。新たな涙がどっとあふれて来る。パドルで打たれた時と全然質の違う痛みに、琴音は、椅子の背にしがみついてひいひいと泣いた。
「琴音さん、姿勢を正して。」
 もちろん、何度もお仕置きを受けてきて、打たれるときは、崩れた姿勢のままではいけない事は知っている。彼女は、お尻の痛みを自分の頭から切り離して、姿勢を正す事を必死に思い浮かべようとした。


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 恐怖と、初めての経験が、彼女を混乱させていた。落ち着いていれば、耐えられたであろうケインの痛みは、泣きじゃくる彼女を完膚なきまでに引き裂いた。だからと言って、もう後戻りは出来ない。自分で決めた。回数が、歴然と自分の前にあるのだ。
 ひっくひっくとしゃくりあげながらも、彼女は自分のお尻を突き出し、両手を最初の位置へ戻した。お尻に再びケインが押し当てられる。突き上げる、痛みへの恐れが彼女の胃を絞りあげた。


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「きゃああああああああああ!!!!!!」
 琴音は痛みに泣いた。そして、叫んだ。何度も崩れ落ち。そして、立ち上がらなければいけなかった。一打事に、増していく、身体に喰い込むような痛みに、勝手に身体は身もだえを繰り返し、足はばたばたと跳ねまわった。痛い。我慢がならない。痛い。耐えられない。
 泣きながら、元の姿勢に戻る。ぐちゃぐちゃになった顔を拭い、もう一度、そして、もう一度。10回。とにかく10回の間は・・・・。


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 10回目が終わった時、琴音はへたへたと座り込み、わんわんと声をあげて泣いた。叔父は、元の椅子に戻って、琴音が泣きやむのをじっと待っていた。しゃくりあげる声が小さくなり、やがて途切れた。10本の蚯蚓腫れを刻んだお尻がひりひりと痛む。

「琴音さん、顔を洗っていらっしゃい。」
「はい・・・。」
 琴音は、ふらふらと立ちあがり、たどたどしい足取りで部屋を出て行った。


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 洗面所で何度も顔を洗い。鼻を噛んで琴音は髪の毛を整えた。腫れた瞼を冷やして落ち着いてくると、いくら痛かったとはいえ、あそこまで泣く事は無かったのではないかと思えてきた。自分の態度が恥ずかしく、スカートのしわを伸ばしながら、そっとお尻を抑えてみる。燃えるように熱く、ひりひりと痛むそこは、今までとは全く違う痛みだった。
・・・・顔を洗っていらっしゃい。
 叔父の声が聞こえたような気がして、戻ってくるように言われた事を理解した琴音は、自分が脱いだショーツも置いて来てしまっている事を思い出して、慌てて叔父の部屋へ戻って行った。


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 叔父は、椅子に座ったまま待っていた。ケインは最初の場所に静かに置かれている。琴音が脱いで畳んだ下着は椅子の端っこに乗せられたままだった。そして、今日の最初に琴音が入ってきた時と同じように、叔父が振り向いた時、琴音は『お仕置き』が、終わっていない事に気がついて愕然とした。
 一人前の女性として振舞うように・・・そう教え諭されたのに、まるで、子供のように泣き喚き、全く耐えようとしなかった自分自身を振り返り、叔父の前に出る一歩一歩の足が震えた。足を前に出す度に、へたへたと、座り込みたいような心もとさが這い上がってくる。叔父に、再び同じ椅子に座るように手で示された瞬間、琴音は、自分が自分に課した『お仕置き』が、用を為していなかった事を認めざるを得ない、悔しさに唇を噛んだ。


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「お、叔父様・・・。」
 しゃべろうとして、また、引っかかってしまう。息を吸い込みお腹に力を入れて、ああ、そう、どうやって声を出すのか、よく考えて・・・。
「叔父様、みっともない真似をしてしまい。申し訳ありませんでした。・・・もう一度・・・・」
 押し出す言葉が、怯えに、消え入るようにだんだんと小さくなる。勇気を振り絞って、ああ、でも、もう一度なんて、耐えられない。耐えられないわ。
「・・・もう一度お願いいたします。今度は、ちゃんと我慢いたしますから。」
 叔父の眉がひょい・・・と、上がった。
 しばらくの空白の時間の後に叔父は、持たれていた椅子の背から身体を起こすと、静かに問いかけてきた。

「何回でしょうか?琴音さん」

 もう一度、は、ただ、繰り返せばいいものではない。必要なのは自分自身に問いかける事。自分自身を正す事。自分が耐えられる限界を見極める事。琴音は、ひりひりと焼けるお尻を思わず抑えた。耐えられる回数は?そして、自分にとって必要な回数は?

 すくむ、気持を堪えながら、両手を握りしめて、琴音は必死に考えていた。



琴音・第三部終了



続く・・・




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    2008

01.30

お仕置き・51

第一部・琴音・1を先に読む
第二部・琴音・8を先に読む
第三部・琴音・17を先に読む

★琴音・18★ 

 義母にパドルでお尻を打たれた時を思い浮かべる。10回がとてつもなく長く耐え難かった事を。ましてや、ケインはもっと痛いはず。ひゆぅぅぅん・・・と、空気を切り裂きしなった時の感触を思い浮かべると、そんなに何度も叩かれるのに耐えられるとは思えない。
「ご、五回・・・。」
「琴音さん、よく考えて。」
 叔父の穏やかな声は、穏やかであるがゆえに、尚更、琴音を芯から震え上がらせた。
「あなた自身の犯した罪にふさわしい回数を選べてると思いますか?」
 もし、自分が罰を宣告する側だったらどうだろうか?そんな中途半端な回数を選ぶだろうか。やっぱり、10回は打つのではないだろうか。


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「10回?」
 叔父はにっこりと微笑んだ。
「回数に捉われないで。そして、私の考えている回数を推測してはかろうとしてはいけない。自分自身に問いかけてご覧。五回で、あなたが充分な『お仕置き』だと、納得できるのならそれでいいのです。」
 琴音は、自分が真っ青になって冷や汗をかいている事に気がついた。これは、いい加減なお尻叩きなどではないのだ。河野の家の『お仕置き』が、意味する物が、今、琴音にのしかかってきていた。
 目を瞑る。毎日の自分の行いを思い浮かべる。自分自身の考え違いを確かめる。それにふさわしいお仕置きを。自分自身を正す罰を。


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「10回です。」
 きっぱりと、言えただろうか?口に出したとたんに不安が湧き上がってくる。本当にそれでいい?自分は、それで、正す事が出来る?
「決めた以上は、その間は耐えなければなりませんよ?」
 ああ、私、その回数耐えられるのだろうか?ケインの痛みを考えた途端に、自分がおびえて後じさりしてしまっている事に気が付く。琴音の視線は、再びおろおろとケインの上をさまよった。さっきまで、そんな回数でいいのか。と、自分に問いかけていたのに、また、そんなには耐えられないと怯えてしまっている。
 息を吸い、そして吐く。また、吸う。大丈夫。大丈夫。
「10回でお願いします。」


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「分かりました。では、下着を脱いで。」
 琴音はひくっとしゃくりあげた。今から、叔父にお尻を叩かれる。そう、考えただけで、涙があふれてくるのが分かった。今までの言動の、あまりの、自分の情けなさに、ひっくひっく、すすりあげながら彼女は立ちあがった。そして、スカートの中に手を入れて下着を降ろし始めた。
 覚悟していたことなのに、身体が震え、熱くなる。恥ずかしさに頬が燃える。それでいて、泣くこともやめられない。琴音はすっかり混乱しながらも、叔父に言われるがままに、椅子の座面に両手を付いた。心持ち持ち上げられたお尻のスカートがめくりあげられた。


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 ひんやりと冷たいケインが、琴音のお尻に軽く押し当てられる、ポンポンっと弾むように、緊張にピンと張りつめた彼女の皮膚の上でバウンドする。嫌!琴音は前のめりに身体が逃げそうになる気持ちを必死でこらえた。嫌、嫌、・・・怖い。

 ひゅううううううううん・・・・。

 覚悟していた風切り音の後に、激痛がお尻の上に炸裂した。
「痛・・・・ああああああああああああ!!!」
 琴音は思わず前につんのめり、ついていた手で、椅子の背中にしがみついてしまっていた。



つづく
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    2008

01.29

お仕置き・50

第一部・琴音・1を先に読む
第二部・琴音・8を先に読む
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★琴音・17★ 



 琴音が恐々と書斎へ入って行くと、叔父はソファの椅子に座っていて、小さなテーブルを挟んだ向い側の椅子へ座るように指示した。おずおずと、そこへ座った琴音はテーブルの上に載せられた籐の鞭(ケイン)に気がついてぞっとした。その鞭が、家のそこかしこに置かれているのは気が付いていたが、琴音は、まだ、一度もそれで打たれた事は無い。それでも、一度、好奇心からその鞭を振ってみた事があり、どれほど鋭く切り裂くような風切り音がするのかは知っていたから、それを見たとたんにすくみあがらずにはいられなかった。
 ああ、どうしよう。そんなもので、叩かれたら、とっても耐えられそうにない。


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「琴音さん、河野の家では「お仕置き」されるのはどんな時だと思う?」
 叔父の穏やかな声に、一瞬、とび上がった琴音だったが、胸の中で自分自身に落ち着くように、必死で呼びかけていた。
「ま、間違いを犯した時でしょうか?」
「さて、そもそも、間違いと云うのはどういう事をさしているのかな?」
 叔父が何を、言わせたがっているのか分からなくなった琴音は、伏せていた顔をあげて、叔父の瞳を見つめた。いつもと変わらぬ静かな瞳の中に怒りの色は無い。それに、勇気づけられて琴音は、正しい答えを見つけようと必死で考え始めた。


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「人は誰でも間違いを犯すものだ。失敗を恐れていては何も学べない。」
「学んだことを忘れて同じ間違いを繰り返した時?」
 不思議そうな声音で、子供のように問い返す琴音の顔を叔父をじっと見つめた。
「琴音さん、あなたはもう大人でしょう?その話し方はふさわしいと言えるかな?」
「あ・・・・・。」
 琴音は、叔父が思っていたよりも厳格に、自分の態度を見ている事に気が付き、居住まいを正した。父や母が、自分に身につけさせた教育からすれば、そのような態度は、決して褒められたものではなかった。
「も、申し訳ございません。」
 慌てて、ぴょこんと、頭を下げてしまってから、琴音は自分がまたしても失敗してしまったのに気がついた。


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「今、私があなたに要求したものが何か分かっているかな?」
「・・・ちゃんとした、一人前の女性としての態度です。」
「ふむ。では、どこが間違っていたか分かりますか?」
「言葉づかい・・・です。」
「では、言いなおして御覧なさい。」
 琴音は、息を吸って、声音を作った。
「ま、学んだことを忘れて同じ間違いを繰り返した時です。」
「落ち着いて…もっと、ゆっくりと言ってご覧なさい。」
「学んだことを忘れて、同じ間違いを繰り返した時です。」
「よろしい。殊更、慌てて、吃音になるよりも、ゆっくりと話した方が美しく聞こえる事は知っていますね。」
「はい・・・。」


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「では、もう一度謝罪して。」
「申し訳ございません。」
 目を見つめてゆっくりと言葉を述べてから、静かに頭を下げる。小さい頃から何度も何度も教え込まれてきた立ち居振る舞いなのに、すっかり、いい加減になっている事に気がついた。
「あなたは、そんな風にぴょこぴょこした動作をするのが、みっともない事は教わってきたでしょう?」
「はい、教わりました。」
「では、どうして、それが出来なかったのだと思いますか?
「気持が緩んでしまっていたんだと思います。」
「ふむ、ちゃんと『お仕置き』されていたのに?」
 はっと、琴音は息を呑んだ。夫や義母からお尻を叩かれる事は、すでに、琴音の中でもっと違ったものに変化してしまっていたからだ。


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「私・・・考え違いをしていました。」
 琴音の声は、だんだん細くなり消え入るようになってしまう。
「琴音さん、背をしゃんとのばしてはっきりと声を出して。」
 失敗を繰り返してしまった事に、琴音は気がついた。視線が自然とケインの方へ泳ぐ。もはや、あの鞭で叩かれる事は逃れようがない事態だった。
「あなたが、ちゃんと反省出来るように、あなたの裸のお尻をケインで打ちます。」
 叔父の穏やかでありながら、断固とした宣告に、琴音はおろおろと腰を上げ掛けて、かろうじて、思い出して姿勢を元に戻した。
「何回、叩いたらいいと思いますか?」
「え?」
 叔父の質問に、琴音は眼を見開いた。打たれる回数は、お仕置きを行う側が決めるものだと思っていたからだ。琴音は、もう一度、ケインの方を見つめずにはいられなかった。

つづく・・・
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    2008

01.28

お仕置き・49

第一部・琴音・1を先に読む
第二部・琴音・8を先に読む


★琴音・17★ 

「河野のお家では、お嫁さんはお尻を叩かれるんだよ。」

 そんな生活が始まって三か月が経とうとしていた。琴音はあれから、二度程、明子にお尻を叩かれた。二度目からの、明子のお仕置きは、厳しくはあるが、決められた数をきっちりと打つもので、分かってしまえば、まだ耐えるのも楽だった。何よりも、明子は、気まぐれな暴君でも、嫌味で厳しい姑でもなく、河野の嫁として「お尻を打たれる」事を覚えさせるためにだけお仕置きをしているようすだったので、自分の立ち居振る舞いにびくびくする必要はなかった。
 もちろん、夫である智也も機会を捉えては琴音を膝の上に乗せたがった。だが、いつの間にか「お仕置き」は、夫婦のセックスのスパイスのように、甘やかな時間の前戯のように位置づけられていた。


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 不思議な事に、乾いて大きな智也の手で規則正しくお尻を叩かれていると、痛みよりも彼に甘えたい気持ちが湧き上がってくる。恥ずかしさは相変わらずだけど、夫の「お仕置き」が、怒った事から来る否定的な気持ちから来ているわけではない事が分かってくると、それに応える事がどこか満足で安心した気持ちにつながっていた。
 智也の膝の上へ引き寄せられる時に、形ばかりの抵抗や、哀願や、神妙なお説教を訊きながらの反省は、許される事を前提にした、儀式だった。通過することで、自分が甘やかされ、すっぽりと包まれて行くのが分かる。つらい気持ちも恥ずかしさも、涙が全部洗い流してくれて、終わった後、智也の胸でゆすってもらいながら泣くのはいい気分だった。


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 なにもなく、ただ、普段のセックスの合間にさえ、智也は琴音のお尻を優しく打つのが常だった。軽く、強く・・・ゆっくりと、追い上げるように。息を切らし、絶え絶えのかすれた悲鳴をもらしながらも、さほど痛くはないそれが、自分の快感に直結した場所へ確実に響く事を、琴音も認めざるを得なかった。口に出して、言う事はなかったけれど・・・。
 琴音の身体は、その刺激に敏感になってきた。「お仕置き」という言葉が魔法のように、琴音を捉える。愛されている事、認められている事、許されている事。

 与えられるものを受け取っているだけの琴音はまだ何も分かっていなかったのだけれど。


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 厳しくお仕置きを受けていたはずなのに、いつの間にか琴音の中で「お仕置き」の質が変化し始めていた。琴音は、嫁いできた嫁と云うよりも、最初からそこにいた娘のように、なんの惑いもなく、何も考えず、ぽったりと、河野の家に落ち着いてしまっていた。
 最初の頃はきちんとこなしていた家事や、夫への挨拶などもだんだんと緩みがちになり、娘時代のようにコロコロと何も考えずに笑って過ごしてしまっていた。そして、それが、留守がちの叔父の目にとまってしまうのは当然の成り行きだった。毎日ではなく、たまにしか会わなかっただけに、琴音がだんだん緩んで行くのが叔父にははっきりと見えていたのだった。


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「琴音さん、夕食の片づけが終わったら、私の部屋へ来てくれないか?」

 そう叔父が、ほほ笑みながら言った時、叔母がさっと青ざめこわばったのに気がついて琴音は首をかしげた。どうふるまったらいいのか、叔母の方をすがるように見、そして、ほほ笑む叔父を見つめる。交互に視線をうつしてみても、固まったままうつむいている叔母も、やさしく微笑んでいる叔父も、何も言おうとはしなかった。
 智也が出張で家にいない夜でもあったために、相談する相手もいない。お皿を皿洗い機にセットしながら、琴音は、不安げにあたりを見回してみる。椅子に座ってグラスを磨いている、叔母の背中は相変わらずこわばったままだった。


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 叔父の部屋へ行けば・・・・


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 お仕置きが待っているのに違いない。恐ろしさと恥ずかしさが足もとから這い上って来る。叔母は何と言っても叔母であったし、同性の安心感もあった。
 それに、どうして、こんなふうに叔母は緊張してるのだろう?分からないけれど・・・もしかしたら、もしかしたら、その事について、叔父は叔母をもお仕置きするのではないのかしら?その想像は、琴音の胸をどきどきさせ、そして、身体を熱くさせた。そうである事に、琴音は驚きながらも、自分が「お仕置き」について、もう河野の家にお嫁に来た時とは、違った感覚を持ち始めている事に気が付いていた。

続く・・・
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    2007

12.16

お仕置き・48

第一部・琴音・1を先に読む
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★琴音・15★ 

「お義母さま、許して、許して。」
 琴音がぽろぽろと涙を零しながら懇願しても、明子はただ黙って待っているだけだった。しくしくと子供のように泣きながらも、琴音の胸にあきらめの気持ちが静かに拡がって行く。どうやっても、逃げようがなく、どうやっても、叩かれるのを耐えるしかないのだという事実が、琴音の胸をゆっくりと満たしていった。抗う事は、琴音自身を辛くさせるだけだった。
「琴音が、反省できるように・・・もっと・・・強くお仕置きをお願いします。」


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「まあ、もっと強く叩いて欲しいの?」
 追い討ちをかけるような明子の言葉に、せっかく覚悟を決めた琴音の気持ちは、揺れ動く。琴音は身を揉んで、頭を打ち振った。
「そう・・そうなんです。お義母さま。強く打ってください。もっと、強く・・・。」
「よく言ったわ、琴音さん。では、もっと、強く打ちましょうね。」
「ああ・・・・。」
 何のために叩かれていたのかという意味はすでに琴音の頭から抜け落ちていた。あるのは、夫の面影だけだった。あの人の妻となるために、そのためだけに琴音はどんなに辛くても、この習慣になじんでいかないといけないのだ。


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バッシイイイイイインン!!!!!
 皮が肉を打ち据える音があたりに響き渡る。
「きゃあああああああああ!」
 今までとは比べ物にならない。琴音にはそう感じられた。跳ね上がった琴音の身体は、激痛を何とかして吸収しようと何度かバウンドを繰り返した。一打目の苦痛が全身に拡がって染み渡り、また、打たれた場所へと漣のように戻ってくる。軽くパドルが皮膚に触れ、二打目が来ようとしている事を琴音に教えた。
 何とかして逃れようと、琴音の身体は勝手に膝から滑り降りようと動いたが、あっという間に義母の足が琴音の膝へ絡み付いて、動けなくなった。


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<
「琴音さん、動いちゃだめ。」
 そんな事は琴音もよく分っている。だが、本能が支配した動きは、理性でどうにかなるものでもない。
「あ、あ、あ、あ・・・・・っ!お義母さま。許してっ!」
バッシイイイイイインン!!!!!
「いやあああ!いやっ!いやっ!」
「我慢して。あと、八回よ。」
 苦痛だけが琴音を支配し、頭の中は真っ白になる。何も考えられず、叫ぶしかなかった。


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「痛あああい!痛い。痛い。痛いの。お義母さま。」
 琴音は恥も外聞もなく泣いた。おそらくは家中に響き渡っているであろう、叫び声も、泣き声も、はばかる事無く思いっきり泣いた。
 お仕置きに対する疑問も、ためらいも、後悔も、羞恥も、激しい苦痛の前では、無力だった。今、琴音の身体と頭を満たしているのはただ苦痛だけ。その苦痛がもたらす、反応だけだった。
 必死で目の前のものにしがみつき、ただただ、我慢できずにに泣き叫んだ。


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 気が付くと、いつの間にか打擲は終わりになり、ひっくひっくとしゃくりあげる琴音は、義母の膝の上で、すすり泣いていた。義母の手が、慰めるように琴音の背中を撫でていた。
「お、お義母さま。ごめんなさい。もうしません。もうしませんから。」
「いいのよ。琴音さん。よく我慢しましたね。」
 優しく撫でる手が、やがてそっと琴音の腰に回されると起き上がるように、促した。
「智也さん。琴音さんを寝室に連れて行って、手当てして差し上げて。」


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 その言葉にびっくりした琴音は、泣きすぎて腫れ上がった顔を持ち上げた。開け放たれた扉にもたれる様に立っていた智也の穏やかな瞳が琴音を見つめていた。今までの様子を見られていた?どこから見ていたの?混乱した琴音の中に再び羞恥が湧き上がってくる。子供のように泣いて暴れている、我慢の足りない様子を全部見られていたなんて。
 すっかり母に甘える子供のようになっていた琴音は、真っ赤になってその場に小さくうずくまってしまった。
「ええ、お母さん。琴音をお仕置きしてくださって、ありがとうございました。」
 うずくまる琴音の身体に、暖かく強い夫の両腕が回され、身体を引き上げられた。


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 夫婦二人だけの寝室のベッドに横になり、落ち着いた夫の優しい手で冷たいタオルを尻に乗せてもらいながら、琴音はしゃくりあげるのをやめる事が出来ないでいた。
 頭の中はあれやこれやで混乱し、ついさっきまで胸を満たしていた満ち足りたあきらめは、どこを探してもみつからなった。琴音は、あの静かな気持ちを取り戻そうと夫の腕にしがみつく。やがて、頭を優しく撫でてもらいながら、琴音はそのまま眠ってしまった。小さな子供が泣きながら寝てしまうように。お仕置きの魔術がゆっくりと琴音を捉え、すでに引きずり込まれつつある事に気が付かないまま、智也の腕の中でまどろんでいる琴音だった。




琴音・第二部終了



続く・・・
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    2007

12.15

お仕置き・47

第一部・琴音・1を先に読む
第二部・琴音・8を先に読む

★琴音・14★ 

バシッ!・・・・・・バシッ!
 さっきよりも一打と一打の間が開いているような気がした。そのために一打ずつの痛みがクリアにはっきりと襲い掛かってくる。その、隙間の時間は、琴音を楽にはしてくれず、痛みをより一層味うための効果にしかならなかった。身体の中を走り抜ける痛みが拡散するかしないかのうちに次の痛みが襲ってくる。それは、一打目よりもなお一層強い痛みに感じられる。じっとしていようとしても身体が抗う。脚が勝手にばたつくのを抑えられない。瞳に盛り上がっていた涙はあっという間に溢れ、ぽたぽたと床の上に滴った。
 いやっ!痛い。痛いいい!許して。許して。もう、やめて。琴音は心の中で繰り返し言わずにはいられなかった。いつ、終わるとも知れぬ苦行に、ひとつの区切りが付くまで、琴音は義母の膝にしがみついて、床を蹴り続けた。


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 最初の十回が終わり、はあはあと荒げた息をついている琴音の赤く腫れたお尻を、明子は満足げに見つめた。そっと掌で擦ってみる。熱く、ふんわりとしたその手触りに陶然となる。
「琴音さん、ご挨拶なさって。」
 涙で何も見えなくなっていた琴音は、ぎゅっと目を瞑って、その雫を振り払う。ああ、なんと言うように言われてたんだったかしら。痛みでいっぱいの頭の中をおぼつかなく手探りして、言うべき言葉を探した。
「あ、ありがとうございます。お義母さま。」
 お礼を言うだけで、言葉が喉をふさぐような気がした。思ってもいない事を口にするのが、こんなに難しい事だったなんて。琴音は、次の言葉を押し出すべく、なんども口をぱくつかせた。
 唾をなんども飲み込む。


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「あ・・・あ・・・琴音が、琴音が・・・反省できるように・・・もっと・・・強くお仕置きをお願いします。」
 ようやく、最後まで言えてほっとしたのもつかの間と言うべきだったろうか、明子のことのほか明るい声に琴音はびっくりして危うく起き上がってしまう所を寸前で耐えた。
「あら、まあ、琴音さん。さっきの打ち方じゃ、弱くて満足できなかったの?それは、ごめんなさいねぇ。次はもっと強く打って差し上げましょうねぇ。」
「あ、違います。そんな・・・。」
 揶揄されているのだと言う事は、琴音にも分った。反論しても仕方ない。だが、抗議の言葉を飲み込むために、琴音は歯を喰いしばって身もだえした。いや、いや。痛いのはいや。かんにんして。もう、おしまいにして。


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バシイインン!!
 琴音の必死の願いも虚しく、次の十回目が始まった。女性の腕で繰り出される打撃なのだから、そんなに酷く強くなっていくはずは無いのだけれど、すでに腫れあがっている琴音のお尻は、新たな打撃に跳ね上がり捩れた。
 息を呑む。その、つめた息が、次の一打の衝撃で吐き出される。
「ひっ」
 声にならない悲鳴が、涙と共に絞り出される。持ちあげた腹を、明子に膝に打ち付ける。くねらせる。耐えるって、どうするんだったかしら。身体が熱くなり、どっと汗が吹き出して来た。琴音はヒイヒイむせび泣きながら次の十回を耐えた。


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 最初の十回も入れて、琴音の尻は、すでに30回の打撃に曝されていた。だが、もう十回は、動かしようが無い、数字として琴音の前に立ちはだかっている。
「さあ、ご挨拶をして。」
 明子の無情な声が催促をする。
「あ、ありがとうございます。お義母さま。」
 その続きを言おうとして、琴音は、凍りついたように言葉が続けられなかった。今の十打でも、耐え難かった琴音にとって、次の十打をもっと強くと願う事は、途方もない恐怖だった。
 自分がまだ、河野家のお仕置きの階段を登り始めたばかりだという事に、気が付いていない琴音にとっては、その一言を言う事が、たとえようもない苦痛だった。



続く

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    2007

12.14

お仕置き・46

第一部・琴音・1を先に読む
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★琴音・13★ 



「分りません・・・。私、いくつなんて・・・。」
 たどたどしく答える琴音をよそに、明子は赤くなったお尻の上を人差し指でそっとなぞった。ぐにゃぐにゃと意味の無い模様を描きながら、明子が思い出しているのは自分の若い頃の事だった。嫁いで来てすぐ、同じように姑の膝の上でお仕置きを受けた時の惨めで辛い思い出。時代が自分に逃げ場所を許してくれなかった。それに比べれば、琴音は自分の息子に愛されているのだ。少しぐらい厳しくした所で、罰は当たるまいというものだ。
「ちゃんとよく考えて。自分がちゃんと反省できる数はいくつかしらね。」


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 琴音は必死に思いをめぐらせる。十や二十と言ったところで、義母が満足するとは思えない。しかし、それ以上の数を打たれた事が無い琴音は、さっきの痛みを思い返しても、そんなに多くはとても耐えられそうにない事に身震いをした。
「に、あ・・・三十・・・・。」
 ぎりぎりの限界。とても耐えられる自信がある訳ではなかったが、それでも、他にどう答えようもなく、琴音はその数を絞り出した。
「あら。」
 明子の声は、明らかに笑いを含んでいる。
「驚いたわ。琴音さん。あなた、とっても我慢強いのね。」
「え・・・。」
 もっと、少ない数でもよかったの?ああ、私、考えを間違えたのかしら?それなら、減らして欲しい。三十なんて耐えられるかどうか・・・。


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「お、お義母さま、わたくし、ほんとは・・・・」
「いいわ。琴音さん。あなたの望みどおりに三十回打ってあげるわ。そんなに打つのはたいへんだけど、大事な嫁のたっての頼みですものね。」
 琴音が次に何を言うか、承知の上で、明子はその言葉をさえぎった。琴音が数少なく言えば、その事でねちねちといたぶり、多ければそれはそれでちくちくと虐めがいがあると言うのが明子の本音だった。
 どちらにしても、明子は充分楽しむつもりで、琴音は掌の上に乗って震えている獲物なのだった。


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「せっかくの琴音さんのご希望だけでど、初めてだから、一気に叩くのは無理かもしれないわ。すごく、痛いのよ、本当に。だから十回ずつ分けて叩きましょうね。」
 明子はわざとらしく、ぴたぴたとパドルでお尻のふくらみをはたいてみせた。
「そうすれば、私も腕が疲れてしまって、琴音さんの期待に応えられずに、だんだんと打撃が弱くなってしまうなんて事態も避けられるし・・・。ちょっと、お休みが入ると、結構、新鮮かもしれないわ。
そうね。十回打つ毎に私がちゃんと休憩できるように、あなたには『ありがとうございます。お義母さま、琴音が反省できるようにもっと強くお仕置きをお願いします。』みたいに、ご挨拶をしていただこうかしら?」


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「お義母さま、お義母さま・・・私、そんな・・・」
 まだ、打たれる前から、琴音の瞳には涙が湧き上がってきた。裸のお尻を晒して、義母の膝の上にいる自分。その事を考えるだけで、なぜか物悲しいような、しくしくと声を上げて泣きたいような気分に襲われる。
「いくわよ。琴音さん。」
バシッ!
 ひっ!その衝撃に、琴音は息を呑む。慣れようがない皮のパドルによってもたらされる痛みに、琴音はすくみあがり、歯を喰いしばった。




続く
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    2007

12.13

お仕置き・45

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★琴音・12★ 




 琴音は驚いた。心底驚いた。一度だけ受けた夫からのお仕置きは、その掌を使ったものだったから。
 それとは、まったく違う『道具』で与えられる痛みに、初めて出合った琴音は、その違いに飛び上がる程に驚いてしまっていた。

 打っているのが男性と女性と言う違いもある。夫と義母という違いもある。だが、それ以上に暖かい男の掌で、加減するように確かめるように追い上げられた先日と、痛みの質があまりにも違っている事に琴音は気がついていた。


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バシン!バシン!バシン!バシン!バシン!
 一打、一打が、容赦なく身体の中に向かって痛みを送り込んでくる。緩急なく振り下ろされるパドルがぶつかってくる痛みが、繰り返し身体の同じ場所にに拡がる。打ち付けられる。その一打の上に、また一打。そして、その上にまた一打。一振り毎に、きつく、痛みが強くなっていく。
 琴音は、身体を捻り、足をばたつかせた。
「痛い。お義母様!痛いです。許して。やめてください。」

「お仕置きなんだから痛いのはあたりまです。そんなに暴れるなんて、なんて、情けない事でしょう。琴音さん、覚悟が足りませんよ。」
 バッシイイイイイン!!


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「琴音さん、暴れないで、じっとしてらっしゃい。そうしないと、お仕置きはいつまでたっても終わりませんよ。」
「だって、お母様、痛いんです。とっても、とっても、耐えられませんわ。」
「そう?だとしても、あなたに選択権はありません。終わるまでじっと我慢する以外にどうしようもないわね。」
「ああ、そんな・・・。」
 初めて味わう痛みに、琴音はすっかり子供に戻ってしまっていた。
さっきまでの恥ずかしさや、夫への甘い想いなどは、どこかへふっとんでしまっている。まさに、お仕置きを受ける、子供のように、いやいやと頭を振り、起き上がろうとした。


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 その背を、明子がぎゅっと押さえつける。
「琴音さん、いい事、河野の家にお嫁に来た以上は、泣き言は通用しませんよ?歯を食いしばって耐える事が出来ないんだったら、誰かを呼んであなたを机に縛り付けることになります。」
「だれかって・・・。誰をですの?お義母様・・・。」
 じわじわとこみ上げてくる恐ろしさに、身体を捻じ曲げて、涙に曇る瞳を明子の方に振り向けると、明子は、それを待っていたかのように、にっこりと笑った。
「そうねぇ・・・。今は家にいる男は、執事の松野か、運転手の・・・。」
「いやああ!」
 琴音の理性に、自分がどんな姿勢でいるのかが甦ってきた。この姿を他の誰かに、それも、使用人に、そして、夫以外の男に晒さねばならないとは、琴音の許容出来る出来事ではなかった。


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「あら、お尻を他の男に見せる事が夫へ不貞だとか、そんな事は心配するには及びませんよ。これが、ただの『お仕置き』にしか過ぎないって事は、河野家の者はみなよく承知していますから。」
「そんな・・・。」
 あまりのことに呆然としていた琴音は、義母が琴音を膝の上から下ろそうとしていることに気がついて、慄然とした。
「お義母さな!でも・・・でも、いやです!お義母さま。我慢します!我慢しますから、そんな事なさらないで。お願い。」
 必死に取りすがってくる、嫁の様子を見ながら、わざとらしく腰を上げて見せた明子は、もう一度ソファに腰を降ろした。
「そう?だったらよろしいのよ。じゃあ、もう一度膝の上にちゃんと乗って。」


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 明子が立ち上がろうとしたせいで、すっかり膝から滑り落ちてしまい、むき出しのお尻をぺたんと床につけてしまっていた琴音は、足を揃えてソファに座りなおした明子の膝の上に、勇気を振り絞って、そろそろと這い上がって行った。
 腹が、義母の膝の上に乗ると、明子はおもむろにもう一度スカートを捲り上げる。10回程打たれて赤くなっている尻が、再び、ひんやりとした空気に触れた瞬間、恥ずかしさが甦ってくる。琴音はそれを目をギュッと瞑ってやりすごした。
 明子は恥ずかしさにぶるぶると震える琴音の背中の上で腕を組み、パドルの裏表をためつすがめつしながら、質問した。
「そうねぇ、琴音さん、あなたは、何回、打ったらお仕置きが終わりって事にしたらいいと思う?」
 そんな事を訊かれても、琴音には答えようもなかった。出来ることなら、このまま逃げ出してしまいたいと思っているのに・・・・。



つづく





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